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zoom RSS 大学路の晩夏

<<   作成日時 : 2005/09/12 01:41   >>

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ソウルから辛さんがやってきます。この前のソウル取材のときに、すっかりお世話になった国際交流基金日本文化センターの方です。
まるまる1日半いっしょに行動していたので、移動のときや食事のときの四方山話から、なんとほんの2週間しか違わない同い年であることが判明。亭主ともども、韓日の世代論や、これまで生きてきた道筋で遭遇した歴史的事件の見え方の違いなど、おおいに盛り上がりました。

辛さんの日本語は達者なだけではなく、ともに東アジア文化圏であることを確認できる中国由来の引用や成語にも通じていて、漢字の複雑な音読み訓読みも見事に使い分けています。漢字はほとんど姿を消している韓国で、どうして?と尋ねると、彼のおじいちゃんは儒学者だったとのこと。そんなわけで辛さんは小学校に上がる前には、すでに一通りの漢字を学んでいたそうです。

2日目の朝、辛さんが連れて行ってくれた韓国の音楽雑誌「客席」の編集部は、大学路とよばれるエリアにありました。かつて京城帝立大学があった場所なのでそういう地名になった由。道を挟んで大学と大学付属病院の建物は当時のまま、残っていました。

「日本の古い建物とおんなじでしょう?」

そうですね、辛さん。この病院など、私が生まれた浦舟町の横浜市立病院そっくりですよ。
そう答えながら、ひょっとすると、この建物を祖父母もこうして眺めていたのではないか、という思いにとらわれました。

学校の先生をしていた祖父が用事で大学を訪れたこともあったのでは。体の弱いこどもがいた祖母はこの大学病院に来たことがあるかもしれない。

日帝時代とこの国の人たちが呼ぶ太平洋戦争敗北までのあのころ、母方の祖父は結婚したばかりの祖母とともに、当時京城と呼ばれたソウルに赴き、国民学校の教師をしていました。都合3回市内で引っ越したそうで、実は今回その3カ所の旧住所を手帳に書き留めて来ていました。もし時間があれば、調べて訪ねてみたい…。

結局訪ねあてる時間はありませんでしたが、大学路の旧帝大あたりを歩きながら、若き日の祖父母に話しかけていました。

時代の流れが、あなたの孫をここに連れてきました。お二人がたぶん願っていたのは、こうしてそれぞれ違う国に生を受けた人たちが、違いは違いとして、握手できること、だったんですよね。
クラシック音楽という西洋由来の音楽が、21世紀には世界のいろいろなところで発展を遂げて、ソウルと東京もこの音楽を共通言語として結びついていきそうです。あなたの孫は、おじいさん譲りで楽器はからきし駄目でしたが、こんな形でこの街の人たちと真剣に議論したり、情報を交換したりしています。ね、いいですよね、これで。

満州で敗戦を迎えたとき、祖父母はちょうど今の私たち夫婦の年齢くらいだったはず(もうちょっと若かったかな…)。行政の責任ある立場にいた祖父は、国の進む方向がとんでもないことになっていることに早くから気がついていたに違いありません。そして、一行政官の立場では、その転落をとどめることができないことにも。そのとき、あなたはどのような思いでいたのですか、おじいちゃん。

かつて大学のキャンパスであっただろう公園の小さなカフェで、寝不足の頭に活をいれるコーヒーをすすりながら、辛さんの言葉に耳を傾けていました。

「日帝時代をいい時代だったという人たちもいるのですよ。その後、この国は戦争になって、軍政になって、大変な思いをした人たちですからねえ。」

ああ、そうなんだ。日本が敗北を抱きしめていた頃、韓国は国土が戦場になってしまったんでしたよね。朝鮮戦争がこの街に持つ重い意味を改めて考える…。

「戦争はいやですね。文化は究極の平和産業ですもの」「そうですよ。政府が何をやろうと、こうして人と人とがつながっている、お互いを知り合って、信頼すればいいんですよ。」「まさに国際交流!」

まるまる2日間、辛さんともう一人の辛さん(通訳についてくれた聡明な女性です。いずれ別の機会にご紹介します)に助けられ、たくさんの人たちに会えました。お二人がいなかったら、コミュニケーションもとれなかったわけで、二つの言葉、ふたつの文化を自在に行き交うお二人の力で、たくさんのことを知ることができました。ネイティヴ韓国語にさらされていた時間も長かったのですが、2日間も聞いていると、だんだん言葉の姿が見えてきます。耳から入れば、45の手習いでもいけるかな…遅まきながら、隣国の言語を習い覚えようかと思っています。

そこに友だちがいると、その街は親しい街になる…ソウルもそんな街になるといいな。

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