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zoom RSS 小さな目撃者

<<   作成日時 : 2006/12/03 01:46   >>

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ハヤタ隊員がフラッシュビームの代わりに、さっきまで作戦室で食べていたカレーのスプーンを掲げたとき、テレビの前のこどもたちのほとんどの脳裏に給食の時間にハヤタ隊員になりきってスプーンを掲げる自分の姿がよぎったはず。
かく言う幼稚園児のわたしも、火曜日の(月曜日には給食がない!)給食がスプーンで食べられるものであることを密かに祈った。

ユネスコ村の万国旗をなぎ倒しながらのたうち回る、かつて人間だった生き物の断末魔に、「世界の平和を祈って」、と言う言葉がさらされている状況を、言葉ではなく、胸に突き刺さってくる痛みのようなものとして感じていた。箱根のユネスコ村を夏毎に訪れるたび、あの悲鳴が耳をよぎった。

暗く暗くどこまでも暗い世界。光の子だから闇に勝ったのか。地底人の暗示にも、光の子たる異星人は負けなかった。闇の中の戦い。後に知るヨハネ傳の冒頭にあったように。「そして闇は光に勝たなかった」

ちゃぶ台の向こうに、宇宙人がいる。ついこの前まで、テーブルで食事などしていなかった。見慣れたちゃぶ台の向こう。後に、下町のおじさんに貼り合わせて貰った宇宙人は、もうこの星は滅ぼさなくても勝手に滅ぶと言って去っていった。

斜め前には作曲家。目前には、指揮者。カテドラルの高い天井から真下に落ちてくる目眩くメシアンサウンドにくらくらしながら、聖者は鳥たちに説教する。鳥のさえずりを福音に変える老人の白眉。極彩色のミサ。

その瞬間、合唱団を抱え込んだ巨大な構造物はざくっと前傾した。運命の輪よ、酷薄なる女神よ!踊る狂言回しは、コール・アングレの常さんに、「恋をしましょう!」と誘う。常さん、立ち上がって、握手!!そう、みなさん、恋をしましょう…

主は言われた、わたしは渇く…ハイドンのピチカートに絡みつく、イエスの最も人間的な言葉。十字架上の言葉の中で、ただひとつ、人としての渇望をむき出しにした言葉だけは、音楽に重ねたい。とにかく、聞いてよ。
現場の狭量な了見を見事に飛び越えたカタルシス。今もそのピチカートは、農さんの深い声と共に耳に刻まれる。

春日局の菩提寺の庭先に、カイトとショーンとエリーがいる。晴海の基地からいっしょに来たわけではないのだけど。

焼香を待つ列に、風もないのに枯れ葉が舞い落ちる。スローモーションのようにゆっくりと落ちかかる葉の間を、楓の種が独り忙しいスピンをかけながら真っ直ぐ私に落ちてくる。

幻の新橋駅の駅標を前にするカントク。怪獣倉庫の中でシーボーズと並ぶカントク。

焼香台に置かれた写真に目を吸い寄せられて、その向こうの祭壇のことをすっかり忘れる。目を上げれば、廊下であぐらをかいているまーちゃん。憮然とした表情が喪失を語っているよう。

カントクといえば、あの人のこと、という了解の輪の中にいつの間にか身を置くことを許されたけれど、そして、今日永久のお見送りの列に連なることも出来たけれど、背の高い人たちに囲まれて出棺の瞬間も見えなかった私は、幼稚園で怪獣博士と呼ばれたこましゃくれた女の子に戻っていた。スカイドンは何トンだったかな…。

あのとき、白黒テレビの(チャンネルはまわすもの、スイッチはひねるもの)前にいた女の子は、結局そのあとずっと、あなたのつくったものの小さな目撃者でした。

DASHの若い隊員たちに、科学特捜隊フジ隊員が声をかける、「ありがとう、みんな最後までお見送りしてくれる?そう。ありがとう。」

メトロン星人が弔辞を読んでいる、「実相寺よ、生きるとは、あの世へいくまでのひまつぶし、というなら、あの世もまた、生まれ変わるまでのひまつぶしか」

人垣の向こう、見えない奥さんの最後のあいさつ「わたしが彼の作品で主役をはったのは、出会いのときと、別れの時。今日も実相寺組の作品で、私は喪主という役割を演じるように言われただけのように感じています。時を経れば、また違った感情も湧いてくるでしょうが、今はそんな気持ちです。ありがとうございました。」

出棺に合わせたように、一羽の鴉が頼りなげに鳴き始める。あれは仲間を探す声。誰も答えてくれないので、ますます不安げに鳴き続ける。棺が寺の門をでようとしたとき、鴉は俄に決然と啼いた。高僧の引導よりも、棺を閉ざす釘打ちの石の音よりも、ひとつの終わりを告げるように。

小さな目撃者は最後まで目撃者。これもあなたの作品ですね。

ところでカントク、月島になかなかいい飲み屋見つけたって、いっしょに今度行こうって、それっきりだったじゃないですか。せめて店だけでも教えて欲しかった。路地裏を縫うように歩くとき、ここかな、あそこかな、カントクが好きそうなとこ、と思いながらきょろきょろしてたんですよ。

實相寺昭雄さん、さよなら。40年間、ありがとうございました。

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